イベント>>科学と仏教の接点>>講座レポート2011.5.28

花園大学・東京禅センター共催 特別企画
科学と仏教の接点Y
「宇宙の起源,生命の起源,そしてヒトの起源 パート2」

講座レポート
2011.5.28

 


東京禅センターでは毎年2回「科学と仏教の接点」と題して講演会を開かせていただいております。第6回は平成23年5月28日(土)に東京都目黒区の龍雲寺本堂にて開催され、100名を越える大勢の方に足を運んでいただきました。
当講座の発案者でもある佐々木閑先生は京都花園大学の仏教学者として有名ですが、先生が理科系出身ということもあり科学に対して造詣が深く、様々な科学分野で先生方との交流がございます。
また佐々木先生の専門とされる原始仏教は縁起の思想に代表されるようにとても合理的な考え方を採り、仏教は修行というアプローチ(方法)をとりますが、違いはあれどその方向性は科学と似ています。そこから、仏教と科学がお互いを認知し合っていくことは大変意義深いことだと考え、色々な分野の第一人者の科学者をお招きしてお話いただいております。
今回は、「科学と仏教の接点X」の続編として、引き続き、科学における宇宙・生命という世界観を、国立遺伝学研究所教授(総研大,東京大学大学院教授を兼任)の斎藤成也先生と、総研大名誉教授の湯川哲之先生にお話しいただきました。

佐々木 先生

科学と仏教の接点とは 「共通するものの見方」

まず最初に佐々木先生より科学と仏教の接点についてお話がありました。
仏教ではすべての苦は無明を原因とする煩悩から発生しており、それを乗り越えるためには自分勝手に物を考えず客観的に見ていくことが大事である。そして、そのようなものの見方は科学においても同様に大事である。仏教においても科学においてもこのような視点を持ち、物事を合理的に考えることが、しいては我々を本来的な幸福に導くのである。
本日の講座を通じて、仏教と科学に共通する客観的な視点に基づく合理的な考え方のトレーニングをしていただきたい。例によって難しいお話になるとは思いますが、「よくわからないけど脳に刺激を受けて」帰っていただければ幸いです、とのお話でした。

斎藤 先生

ヒトの起源

引き続き斎藤先生に「ヒトの起源」についてお話しいただきました。
まず、人類の祖先であるアウストラロピテクス、ネアンデルタール人の骨のDNAの分布を世界規模で調べた結果分かることとして、DNA上はどうやらネアンデルタール人と現代人は交わっているようであるとのお話がありました。
次に日本人の祖先についてお話しいただきました。縄文時代以前のヒト、縄文時代のヒトと、弥生時代のヒト、現代人のDNAを調べてみると、縄文時代と弥生時代のそれぞれのDNAには大きな違いがあり、その分析から日本人の祖先について縄文時代までの東南アジアからの渡来人と、弥生時代の大陸からの渡来人の二系統があり(二重構造モデル)、それぞれのDNAは現代人へ受け継がれているとのお話でした。
最後に進化論について、偶然が大事との考え方は日本人には受け入れ易いが世界は神が創りたもうたという考え方を原点とする欧米人には受け入れづらく、自然科学といえども仮説を立てる際にはその人の文化的背景が入り込むとのお話がありました。

湯川 先生

生命の起源

次に休憩を挟み湯川先生により、前回の「宇宙の起源」を受けて、今回は「生命の起源」についての講義にうつりました。講義の最初に「私の講義は、分からなかったけれど面白かった、が狙いです」とおっしゃられ場内大爆笑。
私たちの持つ基本的な疑問、私たちはどこから来て、何者で、どこに行くのかということについて、生命は神様が作ったものではなく地上でできたものであり、アミノ酸と核酸で考えようという前提で自然科学がアプローチしていることについてお話がありました。
そして生命の初期条件について、次に化学変化がいつどこで始まったかについて、次にDNA・RNAは右巻きでありその対称性が破れないのはなぜかということについて、最後に生命の誕生についての実験的な努力について説明をいただきました。

まとめ

前回に続いて両先生の講義はかなり難解でしたが、その道の専門家であるお二方が共通して、すでに分かっていること、未だ分かっていないことを明確に区別し、素人である我々に対しても真摯に分かっている事だけを積み重ねて説明してくださる姿に感銘を受けました。その姿はまさに佐々木先生のお話にあった、自分勝手に物を考えず客観的に見ていくことによって物事を合理的に考える、という姿でした。
湯川先生の狙い通り、事後のアンケートでも「むずかしかった」という感想が多く見られましたが(笑)、同時にこのような先生方の姿を見て「面白かった」という感想が併記されていました。今回のこの講座が、参加者の皆様にとって、よい仏教的・科学的な思考トレーニングとなり、脳に刺激を受けて帰っていただけたのではないかと思います。
「科学と仏教の接点」は、毎年春と秋の2回開催しております。少しでも興味をお持ちになりましたら、一度この講座に参加していただき、実際に刺激を受けていただけたら幸いです。

この講座レポは平成23年7月1日発行『臨済会報』(臨済会)に掲載していただきました
tokyo-zen-center. All rights reserved.