イベント>>科学と仏教の接点>>講座レポート2011.10.1

花園大学・東京禅センター共催 特別企画
科学と仏教の接点[
「この世の真実とはなにか―量子論からみた世界の実像―」

講座レポート
2012.5.26

東京禅センターでは毎年2回「科学と仏教の接点」と題して講演会を開かせていただいております。第8回は平成24年5月26日(土)に東京都世田谷区の龍雲寺本堂にて開催され、さわやかな春の日差しの下100名を越える大勢の方に足を運んでいただきました。
今回は、前回に引き続き「この世の真実とはなにか―量子論からみた世界の実像―」をテーマに、量子力学の第一人者である東京工業大学教授の細谷暁夫先生を講師にお迎えしました。前回の講座から半年、量子力学の世界は新たな発見が相次ぎ理論の転換期を迎えているとのこと。その最前線で研究を進める細谷先生のお話は前回以上に刺激的なものとなりました。

佐々木 先生

仏教の考え方と量子論の接点
まず最初に佐々木先生よりお話がありました。未来永劫変わらず存在するのではなく、要素の集まりに過ぎない今の私が何かをすればその結果が将来に大きく影響するという仏教的立場の考え方からは、なるべく苦しみが生まれないような状態に持っていくために今の私が何かをする、ということが大事である。
仏教において当たり前のこのような考え方が身につくと、普段の出来事が違うものに見えてくる。これは直接結びつくことではないにしろ、量子論も同様に我々が普段当たり前だと思っていることについて、実はその裏には違う物の見方があるということを明確に示してくれており、この点では仏教的見地と非常に近いものを感じている、とのことでした。

細谷 先生

「すごい話」
次に佐々木先生より「それではこれからすごい話をしていただきましょう」とのご紹介があり、いよいよ細谷先生がマイクの前に立ちました。
まず最初は、前回の講演の中心となった「光子の裁判」の復習でした。前回同様実験からスタート。演台からの距離が近い龍雲寺本堂での実験は、本当に目の前で一緒に実験結果を見守っている感覚で、駒場キャンパスの大きなホールとはまた違う良さを感じました。前回の講演があった10月から今回(5月)までの間に量子力学の世界は大きく変化し、光子の裁判の見方にも変化があったとのこと。本当にすごいタイムリーな時期にこの講演をしておりますと細谷先生。すかさず「狙ったわけじゃないんですが…」と佐々木先生が笑いを誘う。こうやってちょっとずつ緊張感がほぐれ、話に引き込まれていくのが「科学と仏教の接点」の良さだと思います。
光子の裁判の核心「光子は見ていない状態のときどうなっているのだろうか?」という点について、光子の位置が分かっていてもどこに行くかわからず、光子がどこに行くかわかっていても位置が分からないというハイゼルベルグの不確実性原理も、最近小澤正直教授(名大)により厳密に捉えなおされ、長谷川祐司氏らウィーン工科大のグループにより実験的に検証されたことにより理論の転換期を迎えた。すなわち光子をやわらかく捉えて量子状態をほとんど壊さない測定をすることによって、2点を通る光子は干渉を起こしながらも光子の経路を知ることができる。この結果光子の裁判において、従来とは異なり光子がどちらの窓を通ったかがわかることになり、両方通ったとの光子の言い訳は通用せず、光子の敗訴となるであろう、とのことでした。
以上の通り、測定していないときに粒子はどこにいるのか?という理論的な問題が現在の量子力学理論の分野の最先端であり、実験・理論とも現在進行中であるとのことです。

両先生の対談

休憩後は、両先生の対談となりました。ますは細谷先生から、量子力学と西洋人(の物の考え方)はどこかそぐわない、例えば素粒子について彼らが究極の理解は近づいたと考えているのは、終わりがあるという前提に立った考え方であり東洋人と一番違うところだと感じているとの話があった。これに対し佐々木先生は仏教的には究極的なもの、変わらないものなどない、1つの刹那と次の刹那の間に連続性はないが、通常は似たようなコピーがされることによって連続性があるような形になっている。しかし、微小に違う刹那の「積み重ね」によって、未来には大きな違いが現われると応えた。細谷先生はすごく納得した様子で、さらに話は進んでいきました。

総括
科学は自然を相手にまず見て、整理して、系統立てる。その研究者である科学者の必要条件は正直であること。これに対し、仏教の修行者は何十年も一生懸命に考えることが必要で、それは細切れでできることではない故、他のことを全部捨てて専心する。
自分の心に、体に正直に向きあうことが必要で、この点科学者と同様である。ここに一つの科学と仏教の接点があることを細谷先生の真摯なお話し振りに見ることができたような気がしました。

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