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花園大学・東京禅センター共催 特別企画
科学と仏教の接点]
「生きることと死ぬこと 心臓外科医との対話」

講座レポート
2013.5.11

 

東京禅センターでは毎年2回「科学と仏教の接点」と題して講演会を開かせていただいております。第10回は平成25年5月11日(土)に東京都世田谷区の龍雲寺本堂にて開催されました。
当日は講座記録用の録音機器にも大きな雨音が録音されている程の雨天だったにもかかわらず200名近くの大勢の方に足を運んでいただきました。

今回は、「生きることと死ぬこと―心臓外科医との対話―」をテーマに、前回から引き続き心臓外科の第一人者である大崎病院東京ハートセンターセンター長の南淵明宏先生を講師にお迎えしました。さらに今回はもう一人、臓器移植や脳死に多くの著書・論文を持つ学者でありまた僧侶でもある大正大学文学部教授野口圭也先生に新しく加わっていただきました。花園大学教授佐々木閑先生のナビゲーションによりいかなる科学と仏教の接点を見い出すことができたでしょうか。さっそく講演の様子をご紹介したいと思います。

まず最初に佐々木先生よりお話がありました。今回南淵先生をお迎えしたのは、仏教で一番大事な生きることと死ぬこと、という一番大事な問題の最前線である心臓外科という場面で、直接それを自分の目で見、手で触るという現場に携わっている先生のお話を御伺いしたかったからである。前回は、先生が実際何をしているか、ということをご紹介していただくために「すごい映像」を流していただいきましたが、今回はそんな南淵先生が人の死について思っていらっしゃることを存分に話していただきたい。そして、脳死などの様々な人の生き死にに関して普段から研究していらっしゃる今回の特別講師、野口圭也先生も交えて、仏教と科学が人の生き死にを如何に理解するのか、その共通点と相違点を探っていきたい。したがって、今回はいつもと少し趣向が違い、じっくりと対話を深めることがメインになる、とのお話がありました。

次に野口先生より自己紹介を兼ねたご挨拶がありました。先生は佐々木先生の大学時代の2年先輩にあたり以降ずっと親交があること、当時の専攻は9世紀くらいからのインド仏教であったこと、奈良の長谷寺が本山である真言宗豊山派の僧侶でもあること、専門はインドの密教文献であり、また今日の生命を巡る様々な問題、特に臓器移植、脳死という新しい死の定義、生命テクノロジーの進化に伴い命の始まりと終わり、在り方に関して如何に考えていくことができるのか、仏教がそれに対していかなる解決、また考える手立てを提供することができるのかということに関して関心を持ち、自分なりの考えを発表してきた。今日はこの機会に生と死に関する考え方を皆様と一緒に模索していきたいとのことでした。

そしていよいよ対談開始。まず南淵先生が命の現場で普段から感じていることを話し、それに対して佐々木先生が合いの手を入れる、野口先生が仏教的観点から科学における捉え方と仏教における捉え方との共通点・相違点を語る、佐々木先生が分かり易いように補足する、南淵先生がそれを聞いて思ったことを話す、野口先生がそのことについて仏教経典ではこう書かれているという紹介がある、佐々木先生が原始仏教的にはこう考えるとコメントする、南淵先生がボソッと呟き笑いを誘う、佐々木先生が難しくなった話を引き取り新たな話題を提供する、という感じで噛み合った対談となりました。

内容は、先生が最近実生活で体験した電車で突然死した友人の娘さんの話からはじまり、東日本大震災における納得できない死について、被災者、被災者ではない人各々が、当事者の気持ちを如何に普遍化できるのか、生命倫理はともすると観念的な話になってしまうが本質的なところを如何に把握してそれに対する自分の考えをどう持つか、自分が自覚をしないですべてを知ったような気になることに陥らないためには、体験に基づいた考えを持つことが大事、と進みます。

また、講演直前に軽度の心筋梗塞を患い手術を受けたアラフォーの人気女優についてのニュースのコメンテーターとしてテレビ朝日等に出演した南淵先生がその時の感想をコメント。テレビではみなさん観念的に理解しようして、どんな病気ですか、理由はなんですかと必ず聞くが、先生としては彼女を診ていないからわからない。なんでなったんだいわれても、僕のせいじゃない(場内爆笑)。こうあってほしいというところで思い込む。理由を探して原因を決めつけるが、どんな予防法も絶対の効果はなく、理由がなくても心筋梗塞にはなる。でも、患部を見つけて治療することは可能で、45歳くらいで検査すればそれはわかる。病気には原因があるに違いないという思い込み。科学も人を惑わす。邪宗である(爆笑)、とのことでした。

「科学と仏教の接点」、次回は惑星科学の第一人者、『パノラマ太陽系』『地球大紀行』などで知られる松井孝典先生(東京大学名誉教授)をお招きして10月5日(土)に東京大学駒場キャンパスにて開催されます。ぜひ一度この講座に足を運んで、世界の本質を見にきていただけましたら幸いです。

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